塩の達人になろう

塩には“個性” があります。塩の違いを知って、個性で使い分けができたら、
お料理はもっと楽しくなるはず。でも、塩の味や使い方については、誤解や
マチガイがけっこう広まっているようです。正しい「塩の味のルール」を身
につけて、塩づかいの達人になりましょう。
塩の味を決めるもの

 塩の味を決める「ルール」には、塩に関わる2 つの要素が大きく関係しています。それは「粒の大きさ」と「にがりの量」です。

「粒の大きさ」と「カタチ」が塩の味を決める
 塩の味を決める大きな要因は「粒の大きさ」と「粒形」。一般的に、粒の大きい塩ほどまろやかな味がします。細かい粒は口の中で素早くたくさん溶けるため塩味を強く感じ、大きな粒は口の中でゆっくり少しずつ溶けるのでまろやかに感じるのです。また、フレーク塩のように形状が複雑で比表面積の大きい塩は、強く塩味を感じます。
大粒小粒
大粒小粒
 「にがりの量」が塩の味を決める
 一般的に「にがり」の量が多い塩ほど、直接的な塩味から遠ざかり、複雑さやコクが出てきます。にがりとは、海塩(海水から造る塩)の製造過程でできる液体のことで、マグネシウムやカリウムといった無機物、ミネラル成分をたくさん含んでいます。にがりのミネラル成分にはそれぞれ味の特徴があり、例えば塩化マグネシウムや塩化カリウムは苦味を感じさせます。これらのミネラルの味によって塩の鹹味(かんみ=塩辛い味や食物のこと)が抑えられ、複雑な味が生まれるわけです。
原料や製法は味に関係ない!?

 2つのルールをご覧になって、「あれ?『 岩塩』や『天日塩』は、味とは関係ないの?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。実はその通りで、製法や原料は、あまり味とは関係ないのです。たとえば岩塩の味がまろやかなのは粒が大きいからで、細かいサラサラの岩塩ではそういう味はしません。にがりの量に関しても、単純に「この製法だから多い」ということはいえないのが実状です。

原料や製法は味に関係ない!? 特に日本では、天日塩を外国から輸入し、国産のにがりを添加した商品がたくさん販売されているので、にがりの含有量と製法の関係はあいまいです。つまり純粋に味覚の見地からいえば、やはり「粒の大きさ」「にがりの量」が味を決めていることになります。

 イメージに訴える広告などにまどわされず、
目的に応じた塩を正しく選びたいですね。

実践! 塩の達人になろう!

 塩には、食材や料理に応じて様々な使いみちがありますが、粒の大きさ、にがりの量なども考えて使い分ければ、 ぐんと使い勝手が違ってきます。ここでは、“塩を使いこなす” ための実践的なアドバイスをご紹介します。

基本的な塩づかい
塩を計る
塩を計る
 塩は、結晶の形によって量(かさ)が違うので、同じひとつまみでも塩分量が変わります。結晶の形が均一でない塩は、かさばる(すきまが多い)ために見た目よりも塩分量が少なくなるのです。この性質を使えば、ザクザクしたフレーク塩などを使うことによって、毎日の料理で自然に減塩していくこともできます。
塩をふる
塩をふる
 肉や魚などに下味を付ける「ふり塩」は、サラサラした塩を選ぶのがポイント。水分量が少なく、粒の細かいサラサラした塩の方が、手にくっつきにくくて使いやすいからです。しっとりした塩、つまりにがりの多い塩は作業しにくいので、本来ふり塩にはあまり向きませんが、から炒りしてすり鉢ですれば使いやすくなります。
塩を食べる
塩を食べる
 おむすびや天ぷらの塩など、塩を粒のまま食べるような料理の場合には、塩そのものの味が重要になってきます。ただ、にがりの味が強すぎると食材そのものの味に干渉することもあるので注意しましょう。調味用としては、ミネラル含有量が5%位までの塩が適しているといわれています。自分の舌で確かめて、好みの味を見つけてください。
調理法別の塩づかい
漬け物の塩は、食材とのなじみやすさで選ぶ
漬け物の塩は、食材とのなじみやすさで選ぶ
 漬け物用の塩選びのポイントは、材料になじみやすい、粒の細かい塩を選ぶことです。ただ、ご家庭に一般的にある塩でも、材料をしめらせて塩をよくまぶす、味のムラが出ないように材料をすき間なく並べるなど、工夫次第で、おいしい漬け物ができます。
野菜は、塩で水気をコントロールする
野菜は、塩で水気をコントロールする
 野菜に塩をふるか、濃い塩水につけると、中の水気だけが外に引き出され、野菜が収縮してきます。サンドイッチのレタス、酢の物のキュウリなどはあらかじめ塩をふっておくと、歯触りはそのままに、全体がしんなりしてきて好都合です。この時のふり塩は、サラサラのものを使いましょう! 逆にサラダの場合は、塩や、塩の入ったドレッシングを早くかけすぎると、野菜の水分が流れ出て味が薄まってしまうので要注意です。
色出し・変色防止の塩にも、正解がある
 野菜の色出しやリンゴの変色防止には塩水を使いますが、これにはそれぞれ、適正な塩分濃度があります。リンゴの変色防止は0.5%(500ml の水に塩約小さじ1/2 杯)、野菜の色出しは1%以上(500ml の水に塩約小さじ1杯)が目安。これ以上濃いと、食材に塩味が付いてしまうので注意しましょう。
焼き魚は、にがり入りの塩で決める
焼き魚は、にがり入りの塩で決める
 いつもの焼き魚に、にがり入りの個性の強い塩を使ってみてはいかが? にがりの味わいが塩味にプラスされて、魚の風味がより複雑になります。
煮物の味付けは、砂糖を先に、塩を後に
煮物の味付けは、砂糖を先に、塩を後に
 煮物の具には、均一に味をなじませたいですね。そのためには、浸透が遅い砂糖は先に、塩や醤油はその後で加えます。これがいわゆる「さしすせそ」の順番の理由です。ただし、たっぷりの煮汁で長時間かけて煮る料理(おでん、含め煮など)の場合には、同時でもかまいません。
煮物の味付けは、砂糖を先に、塩を後に 図解
塩抜き、砂出しのコツ
 塩漬けの数の子やわかめなどの塩気を抜く「塩抜き」には、コツがあります。それは、いきなり真水にひたすのではなく、まず薄い塩水(1%前後の塩水)にしばらくひたすこと。これを「迎え塩」といい、ほどよく塩気を残しつつ、早く塩気を抜くことができます。また、あさり貝の砂出しの場合は、なるべく海水の塩分濃度(3%)に近い塩水にします。貝の体内の海水まで吐き出させてしまうとおいしさが逃げますから、塩水はかぶるくらいで、なるべく少な目に。ふたをして、冷暗所で砂を吐かせましょう。