
最初から海水を煮詰めて塩にしようとすると膨大なエネルギーが必要になります。ですから、まず「かん水」という、できるだけ濃い海水をつくります。この工程を「採かん」といいます。この「かん水」を煮詰めて塩をつくるのですが、この過程を「煎ごう」といいます。塩資源となる岩塩層がなく、天日塩をつくる環境にも適していない日本では、伝統的に「採かん」「煎ごう」といった工程で塩づくりをしてきました。
今は、機械化されて効率的になりましたが、基本的な塩づくりの工程は変わっていません。わずか3%の塩分をいかに取り出すか。また、今は海の汚れもこわいですから、安全性にも万全の配慮をしながらやっています。
かん水は昔は塩田で、今ではイオン交換膜でつくられています。

かん水を煮詰める工程は、真空蒸発缶と平釜の2種類があります。

煮詰める方法の違いで色々な塩ができます。


最近よく売っているものは口当たりよく薄めているので、多くの方は本物のにがりっていうのは舐めたことないと思います。本物のにがりは、それはもう辛いもので、舐めたらピリーッ!ときます。
にがりはカリウム、マグネシウム、鉄、カルシウムなどいろんなミネラルを含んでいて、有効利用されています。食用以外に有名なところでは、NASAの宇宙船の外壁に使われたりしています。
これなんか、ある意味では海が宇宙を飛んでいるわけで、不思議な感じですね。
海の成分ということではもう一つ面白い話しがあって、塩をつくるためにはまず海水をろ過するのですが、そうすると水道水の10倍もきれいな透き通った海水になります。あせもがある子をそのきれいな海水につけると、あせもがパーッと引くんです。これも海の力だと思います。

成分値が細かく決められていいて、検査でそこから外れていると、また溶かして一からつくりなおすというこらい徹底しています。原料である海水を濃縮する時にも、イオン膜法で100万分の1㎜というレベルで海の汚れや有害物質を遮断して、丁寧に塩だけを取り出すようにしています。この技術は世界的にも高く評価されています。
また、日本海水では衛生管理についても大変厳しく、例えば、輸送用の袋(フレコン)の扱いひとつとってもそうです。どの袋がどこに行き、どのように帰ってきたのか、全部記録から追跡できるようになっています。このフレコンは工場に戻ってくると、毎回大量の水で洗浄します。1日平均50m3は水を使います。
ちなみに、この水には塩づくりで生じる蒸気を無駄なく利用しています。塩というのは口に入れるもの、健康にかかわるものです。そういうものを扱っているんだということを、いつも周知徹底しています。きれいな袋でお客さまに塩を届ける、この最後の部分までがわたしたちの仕事です。
釜で沸騰させて煮詰めて塩にするところは、「圧力鍋」と「お風呂」に喩えるとわかりやすいと思います。まず、塩を煮詰める釜は料理に使う圧力鍋の巨大なものだと考えてください。いくつも並んだこの釜に少しづつ違う気圧をかけます。最初の釜は110℃くらいで沸騰するように、つぎは90℃くらいでその次は75℃くらいで・・・と、沸騰温度をどんどん低く設定していきます。
そうすると、最初の釜だけを蒸気で沸騰させれば、その沸騰蒸気が今度は次の釜を沸騰させて、その蒸気がまた次の釜を沸騰させて・・・と、どんどん最後までいけるのです。全部を沸騰させようとしたら本当なら大変なエネルギーがいるのです。
しかも話しはまだ終わりではなく、最後の釜の蒸気、これもまったく余らせない。これを大量の海水で一気に冷やすことで、蒸気全体がギュッとちぢんで、大きな釜の気圧が下がります。栓を抜いたお風呂がググッと水を吸い込む時みたいに、海水の落下を利用し強いひっぱる力が生まれます。この力が、実は釜にかける圧力になるのです。そうするとまた最初に戻って、釜一つ分のエネルギーで、気圧の違う全部の釜が次々に沸騰していくのです。
塩づくりというのは周囲の自然環境を十分に活かして、水もエネルギーも全部無駄なく有効利用しながら、海の恩恵を賜っているのです。
